漢方のご紹介
漢方というと、比較的慢性の疾患に使用され、急性の疾患では風邪のときの「葛根湯(かっこんとう)」くらいしか名が知られていませんが、実は症状や病態によっては、かなり即効性のある薬なのです
西洋薬との併用も可能で、副作用も少なく比較的安全です
小児に使用する場合は概ね小学校高学年が大人の2/3、低学年が1/2、保育園児が1/3、その他が1/4といったところです
代表的な製剤を私見を交えてご紹介致します
(1) 葛根湯(かっこんとう)
比較的体力がある、胃が弱くない方で、頭痛、悪寒、発汗のない発熱や、中耳炎、肩こり、頸部の痛みによく効きます
背中がゾクゾクするときなどは湯に溶いて服用して頂くと身体がポーッと温まります
処方箋上は「毎食前 1日3回」となっていますが、症状が強いときの屯用や眠前服用が有効です
「麻黄(まおう)」という成分が含まれるため、元々胃が弱かったり、病気のせいで食欲が著しく低下した方は麻黄を含まない「(70) 香蘇散(こうそさん)」などが適応となります
(6) 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
”東洋医学の抗生物質”とも呼ばれ、にきびなどの化膿を伴う皮膚疾患やアトピー性皮膚炎に有効です
(10) 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
急性期を経てなお頭痛、悪寒、関節痛、食欲不振が続く熱性疾患や、心窩部(みぞおち)から季肋部(肋骨の下~奥)に苦しい感じや張り、痛みがある慢性疾患(胃十二指腸潰瘍、胆のう炎、膵炎等)に有効です
(16) 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
内視鏡検査などでも異常がないのにのどや食道が塞がった感じがあったり、のどに球があるような感じがあるかたに著効します
気分がふさいで不安や不眠、動悸があるときにも有効です
(17) 五苓散(ごれいさん)
浮腫み、頭痛、めまい、嘔気・嘔吐、下痢、二日酔いによく効きます
小児の胃腸かぜなどで脱水が強くないときに少しずつ服用してもらうとすぐに嘔気が治まります
ノロウィルス等のウイルス性胃腸炎で、腹痛や上腹部の苦満感が強い場合には抗炎症作用を有する「(9) 小柴胡湯(しょうさいことう)」と本剤の合剤である「(114) 柴苓湯(さいれいとう)」が有効です
少し酸っぱさがありますが、この製剤がよく効くときは甘く感じるようです
二日酔いの予防や改善にも有効ですので飲酒前や飲酒後の服用をお勧めします
(19) 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
アレルギー性鼻炎で水のような鼻水、鼻づまり、くしゃみがあるときやアレルギー性結膜炎で目が充血して涙が多いとき、気管支喘息などに著効します
漢方の中でも特に酸味の強い製剤です
(27) 麻黄湯(まおうとう)
体力が充実した人の悪寒や頭痛、節々の痛みを伴う感冒(発汗するまで)のやインフルエンザに有効です
インフルエンザの際の解熱までに要する日数が抗ウィルス薬のタミフルの効果と同等であったと報告されています
乳幼児の鼻閉塞にもよく効きます
(68) 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
急激に起こる筋肉の痙攣を伴う痛みに有効で、キリキリと絞られるような腹痛やしゃっくり、こむら返りによく効きます
夜間のこむら返り予防には眠前の服用が有効です
「甘草(かんぞう)」を多く含みますので偽性アルドステロン症(低カリウム血症、血圧上昇、筋力低下など)発症に対する注意が必要です
(126) 麻子仁丸(ましにんがん)
便がコロコロの兎糞様を呈する、体力の低下した老人や虚弱者の習慣性便秘に有効です
(136) 清暑益気湯(せいしょえっきとう)
暑さによる食欲不振、下痢、全身倦怠、夏痩せ、暑気あたり(軽い熱中症)に有効です
Last updated 2021-09-16